■資料解説
タイムズ(タイムス)の軍事投書家による記事を紹介したものです。第三回の閉塞作戦における日本海軍の勇猛さを伝えています。
こうした欧米、とりわけアメリカにおける日本の好意的態度には、当時ダートマス大学講師で東洋政治を担当していた朝河貫一の影響も大きかったと思われます。朝河はこの時期に“THE RUSSO‐JAPANESE CONFLICT”(『日露紛争』)を執筆しました。読者は知識人に限られているとはいえ(実際の売り上げは数千部)、米紙『ニューヨークタイムズ』の社説や『ネイション』をはじめ一紙六誌の書評で取り上げられ大きな反響を呼びました。
上記著作の中で、朝河は次のように分析しています。「アメリカの若々しい国家がコモドア・ペリー(提督)とタウンゼント・ハリス(公使)を通して日本に影響を広げて以来、日本はこの文明の輪に加わり、工業と教育による国家の進歩の精神をアメリカから熱心に採用し」貿易を促進してきた。それにも関わらず、「東アジアの市場が閉ざされるなら、日本の増加する人口は、その食料と職業の多くが奪われ、日本の国民生活は麻痺するであろう」。日本の命運は満洲と韓国の市場の「門戸開放」にかかっており、その点で日本の利害は工業国の「過剰生産のため東洋に公開市場を求める欧米諸国」と一致する。一方で、未だ封建制の段階にあり工業生産の遅れた「ロシアの利益は高度に排他的な政策によってのみ維持、発展」するものであり、ロシアは領土拡張にのみ狂奔する旧い文明にすぎない。
朝河はこのように日露戦争を新旧文明論の対決として位置づけ、日本支持の世論形成のためアメリカでの講演活動に奔走していました。
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