アジ歴ニューズレター第30号

2019年12月19日 発行

関連資料の所在情報

アメリカ合衆国コロラド州における日本資料所蔵状況

1.アメリカ国立公文書館コロラド州デンバー地域資料館(→ウェブサイト

 アメリカ国立公文書館には、ワシントンD.C. にある本館のほか、分館、地域資料館、大統領図書館があり、コロラド州デンバー地域資料館では、ロッキー山脈地区のコロラド州、モンタナ州、ニューメキシコ州、ノースダコタ州、サウスダコタ州、ユタ州、ワイオミング州にある連邦政府の部局や裁判所で作成された公文書を所蔵しています。所蔵資料には、太平洋戦争期における日本関係資料も含まれています。例えば、①戦時中に日系アメリカ人が強制収容されたトパーズ収容所(ユタ州)、ハートマウンテン収容所(ワイオミング州)関連の資料、②占領期にGHQに在籍した科学者が収集したと思われる、戦時中の電離層観測の資料などがあります。所蔵資料は、アメリカ国立公文書館のサイト上にあるオンラインカタログで検索することができます。詳細検索画面で、資料の所蔵場所をデンバーと指定すると、同資料館の資料だけを検索できます。

アメリカ国立公文書館コロラド州デンバー地域資料館

2.デンバー公共図書館(→ウェブサイト

 1889年創設のデンバー公共図書館は、中央図書館のほか、アフリカ系アメリカ人研究図書館および24の支部図書館からなります。多くの市民が利用する公共図書館ですが、書籍だけではなく、地域に関わる様々な歴史資料も所蔵しています。移民の多いアメリカ社会では、日系アメリカ人に関する資料も、地域の歴史資料の一つと見なされています。中央図書館の「西部の歴史と系譜(Western History and Genealogy)」部門の所蔵資料には、①1962年にデンバーで創刊した日系アメリカ人向けの新聞「Rocky Mountain Jiho」、②日系アメリカ人のジャーナリスト、ビル・ホソカワ(1915-2007)が所蔵していた文書、③大角岑生(海軍大将)のデンバー在住の親族が戦時中に記した日記などがあります。所蔵資料は、同館のサイト上にあるオンラインカタログで検索することができます。形態で「Manuscript」を選ぶと、一次資料について検索できます。

<水沢光(研究員)>

デンバー公共図書館

3.コロラド歴史博物館(→ウェブサイト

 コロラド歴史博物館(History Colorado Center)は2012年に開館し、コロラド州に関する歴史資料の管理と公開、大人から子供までを対象とする教育プログラムの提供を行っています。1階から4階まで展示室があるほか、2階のハート・リサーチ・ライブラリー(Hart Research Library)では資料の請求と閲覧ができます。また、オンライン・コレクションで一部の資料の画像を閲覧することができます。 コロラド州のグラナダには、1942年から1945年までの間、7,000人を超える日系アメリカ人を収容したアマチ収容所がありました。そのため、コロラド歴史博物館にも日系アメリカ人や日本に関する資料が多く所蔵されており、それらの資料は「日系アメリカ人及び日本コレクション」として構築されています。また館内にはアマチ収容所の一室を再現した展示室があり、さらにアマチ収容所に関するオンライン展示も公開されています。 今般調査した資料の中には、例えばアマチ収容所で制作された邦字新聞「Granada Pioneer」、その他にも軍刀、小銃、アルバム、食器、衣料品などがありました。日系アメリカ人からの寄贈だという、黒いウェディングドレスも印象的でした。いずれも、コロラド州の日系アメリカ人の歴史を知ることができる貴重な資料です。

コロラド歴史博物館内部

4.コロラド大学ボルダー校ノーリン図書館(→ウェブサイト

 ノーリン図書館(University of Colorado Boulder, Norlin Library)は、コロラド州立大学ボルダー校キャンパスにおいて最大の図書館です。ノーリン図書館内にある特別コレクション部門(Special Collections, Archives & Preservation)では、教育や研究のために必要な貴重書、写真、音源、映像などを管理しています。資料の請求と閲覧室の利用は、誰でも可能です。 ノーリン図書館では、1942年から1946年までコロラド大学ボルダー校に置かれていた海軍日本語学校(1944年に東洋言語学校に改称)に関する資料収集を目的としたアーカイバルプロジェクト(The US Navy Japanese/Oriental Language School Archival Project)が行われてきました。この学校の沿革やプロジェクト開始の経緯については、早稲田大学の和田敦彦教授による特設サイトなどで詳しく知ることができます。 プロジェクトによって収集された資料は、膨大な数にのぼります。その多くは、海軍日本語学校の卒業生や卒業生の家族、学校の先生(sensei)といった個人に関する資料です。それらはアーキビストによって整理され、現在までに100以上のコレクションが構築されてきました。また、プロジェクトのニューズレターである「The Interpreter」では、海軍日本語学校の卒業生や先生などについての情報を定期的に発信しています。 卒業生の中には、日本文学の研究者として有名なエドワード・G・サイデンステッカー氏とドナルド・キーン氏がおり、両者に関する資料もあります。今般調査したサイデンステッカー氏のコレクションでは、日本語の単語帳や英語の日記帳などの充実した資料を見ることができました。

<松浦晶子(研究員)>

コロラド大学ボルダー校ノーリン図書館外観