アジ歴ニューズレター

アジ歴ニューズレター 第41号

2023年8月31日

対外活動報告

南京大学中華民国史研究センターにて開催のワークショップへの参加に関する報告

1.2023年7月12日(水)、中国・南京において、南京大学中華民国史研究センター及び南京大学歴史学院の共催により、日中米3か国のアーカイブ機関が集う「海外のアーカイブズコレクションと近現代日中関係の学術ワークショップ(Workshop on Archives Overseas and Modern Sino-Japanese Relations)」が開催され、中華民国史研究センターの招聘により、アジア歴史資料センター(以下「アジ歴」)、ハーバード燕京図書館(Harvard-Yenching Library)の関係者が参加しました。また、聴衆として南京大学や南京師範大学等の学生や院生約30名が参加しました。

 

2.冒頭の「基調講演」において、ハーバード燕京図書館、南京大学中華民国史研究センターおよびアジア歴史資料センターの代表からそれぞれ、各機関の所蔵資料、現状や施策等について講演を行いました。

アジ歴の波多野澄雄センター長は、「アジア歴史資料センターの挑戦」と題する基調講演を行い、横断的検索や資料のテキスト化等のアジ歴の先駆性や、公開資料の戦後期までの延伸、リンク提携事業の推進等を通じた公開資料の拡大に向けた取り組み、OCRによる資料の全文テキスト化を視野に入れた資料の世界的共有の展望等、アジ歴の成果と課題について説明を行いました。

南京大学中華民国史研究センター学術委員会主席の陳謙平教授は基調講演の中で、歴史の学術研究をより高いレベルで推進するためには、国際的な視野を持ち、多国籍の史料の活用にも配慮した研究が求められる等述べました。

 

3.次に、「研究者による報告」として、村田雄二郎同志社大学教授(アジ歴諮問委員会委員)、金子貴純アジ歴研究員を含め、上記3機関から計8名の研究者が、近現代の日中関係史について発表を行いました。

村田教授は、日本の公文書や袁世凱文書等の個人文書の資料的価値や、そうした資料を用いて行ってきた明治・清末期の日中関係史及び辛亥革命期の南北問題研究等の成果を報告しました。金子研究員は、1930年代の国民党内の「西南派」に対する日本の政策を、アジ歴の横断的検索を使用することで研究が進展した事例として紹介し、アジ歴の機能が持つ研究発展の可能性を提示しました。

 

南京大学中華民国史研究センターの発表者からは、以下のテーマについての報告が行われました。

・ジュネーブ所蔵のリットン調査団に関する史料

・ジョージ・アシュモア・フィッチ夫妻(注:中国蘇州生まれのアメリカ人宣教師)に関する史料

・第一次上海事変勃発後の国際連盟における審議内容及び日本の国際連盟脱退

・米国のオーバリン大学、コロンビア大学及びスタンフォード大学フーバー研究所所蔵の孔祥熙(注:南京国民政府時期に財政部長、行政院長を歴任)関連の史料

ハーバード燕京図書館の発表者からは、以下のテーマについての報告が行われました。

・ハーバード燕京図書館所蔵の第二次大戦中の日中戦争の写真集、満鉄資料、堀越喜博文庫満州文献などの紹介

・ハーバード燕京図書館を紹介しつつ、ジョージ・アシュモア・フィッチ夫妻の活動と米国の対日禁輸措置について報告

4.所感

・これまでの海外向け広報活動はアジ歴の設置経緯や使用方法の紹介が中心でしたが、今回のワークショップでは、一般的な紹介に加え、相手の関心に沿って、アジ歴公開資料の具体的な利用方法を説明したことで、より深まった議論ができ、聴取者の好評を得られたのは有意義でした。アジ歴広報の好事例として今後活用して参ります。以上から、今次のワークショップへの参加は、初期の広報目標以上の成果を挙げられたと考えています。

・参加した3機関にとって、本ワークショップはコロナ禍以降、3年半以上ぶりの国際的な会合であり、対面により議論を行う価値と意義を再認識できました。各機関の代表者からは、ワークショップを契機に今後とも交流を継続していきたい旨の発言がありました。特にハーバード燕京図書館に関する公開デジタル資料の情報が得られ、今後のリンク提携の可能性を探って参ります。また、南京大学側からは、アジ歴は多くの貴重な資料をネット上で公開しており、中国のユーザーから高く評価されているとの意見も聞かれました。

・アジ歴としては、引き続きアジ歴の取組を積極的に紹介することを通じ、海外の研究者や教育関係者に日本研究の可能性をアピールすることに努めるとともに、コロナ禍で滞っている東アジア地域等、海外の類縁機関、ユーザー等との交流や広報活動を再度活性化させていく所存です。

アジア歴史資料センター