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解説 | 宗教団体法の施行以前は統一された宗教法というものはなく、時宜により必要に応じて発布された太政官布告や教部省達、内務省令、訓令、社寺局通牒、文部省令など紛然たる諸法規による行政がおこなわれていた。このような宗教法規を統一整備して宗教行政を明確にしようとする機運が起こり、1899年(明治32)、「宗教法案」が貴族院に上程されたが否決され、成立しなかった。1921年(大正10)以来、文部省宗教局では宗教制度調査費を設け、宗教制度制定のために基礎資料の調査・研究をおこなっており、1926年(大正15)5月に宗教制度を審議するために宗教制度調査会が設置された。1927年(昭和2)に「宗教法案」、1929年(昭和4)に「宗教団体法案」が立案されたが、いずれも成立しなかった。1935年(昭和10)末に「宗教団体法草案」と「宗教団体法案要綱」を作成したが成案には至らず、1939年(昭和14)に「宗教団体法」(昭和14年4月8日法律第77号)がようやく成立し、翌年4月1日から施行された。当時の国家主義的方針に則った統制法の性格が色濃く反映されたものであった。関連法規としては、1939年(昭和14)12月23日に宗教団体法施行令、1940年(昭和15)1月10日に宗教団体法施行規則、3月8日に宗教団体法・同施行令及び同法施行規則施行に関し取扱方の件、3月15日に教派、宗教及教団の報告に関する件、3月16日に宗教団体登記令、公衆礼拝用建物及敷地登記令、3月20日に宗教団体登記取扱手続がそれぞれ公布され、役目を終えた宗教制度調査会は3月30日に廃止された。戦後、連合国軍最高司令部から「政治的、社会的及宗教的自由ニ対スル制限除去ノ件」(昭和20年10月4日、SCAPIN-93)の覚書が出され、治安維持法などとともに宗教団体法も廃止するよう要求された。1945年(昭和20)、宗教団体法は関連法規とともに廃止され、同時に国家神道ではなくなり、一宗教となった神社神道を含む「宗教法人令」(昭和20年12月28日勅令第719号)が緊急勅令として公布・施行された。急場しのぎであった宗教法人令は1951年(昭和26)に廃され、「宗教法人法」(昭和26年4月3日法律第126号)が公布・施行され、幾度の改正を経ながら現在に至っている。 |
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参考資料 | Ref:宗教制度調査会(A14100013000)、宗教団体法(A14100767100)、宗教制度調査会廃止(A14100780200)、宗教法人令(A14101355800)、宗教法人法(A13111533000)文部省『学制百年史』(帝国地方行政学会、1972年)、梅田義彦『改訂増補日本宗教制度史 近代篇』東宣出版、1971年)、文化庁文化部宗務課編『明治以降宗教制度百年史』(原書房、1983年)、大澤広嗣「宗教団体法制定と文部省宗教局長の松尾長造」(『仏教文化学会紀要』22号、pp.28-65、2013年) |