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解説 | 1931(昭和6)年4月1日に公布、同年8月11日に施行されたカルテルの助成と規制を規定した法律で、5ヶ年の時限立法であった。正式名称は「重要産業ノ統制ニ関スル法律」(法律第40号)。商工省に設置された統制委員会により、経済界の意向を汲んだ形で法案が作成され、政府により議会に提出された。同法では、第一条において重要産業に従事する企業がカルテル協定を結ぶ際、主務大臣への届出をなすことが義務付けられた。ここで言う重要産業の種類については、統制委員会の議を経て主務大臣が指定することとされた。第二条では、主務大臣は統制委員会の議を経て、カルテルに加盟していない企業に対してもカルテル協定への服従を命じる権限を有することとされた。第三条では、主務大臣は統制委員会の議を経て、公益に反すると判断されたカルテル協定の取り消しを命じる権限を有するものと規定された。第四条では、主務大臣はカルテル協定への加盟企業、さらには非加盟企業に対しても業務査察を実施する権限を有することが明記された。以上のように、同法の施行により、重要産業と指定された業種におけるカルテル協定が助成される一方、カルテル協定に対する規制も強化され、同時に消費者にとっての適正価格の維持にも一定の効果があった。同法に基づき指定された重要産業として、1931年12月に指定された紡績・製紙・製粉・セメント・化学・金属など19業種、1932(昭和7)年11月に指定された揮発油など3業種、1934(昭和9)年5月に指定されたビール・石炭の2業種があった。同法は1936(昭和11)年5月28日に改正され、施行期間が5年間延長された。改正後は、同法中の「主務大臣」の部分がすべて「政府」に改められた。また、重要産業に指定された業種に従事する企業の新設および設備拡張が許可制とされた。実際には、カルテル協定への強制加入規定も議論されたもののその導入は回避された経緯はあるが、それでも企業の新規参入に対し一定の抑制効果があったと言える。その一方で、同法第二条付則事項の2と3が追加されたことで共販会社およびトラストにも同法が適用されることとなり、独占取締規定の強化が図られた。同法改正に伴い、トラストとして指定されたのは洋紙(王子製紙)とビール(大日本麦酒)の2業種であった。以上のように、同法は企業間の自主的規制の原則の下、カルテルの助成と規制という二面的な効力を有するものであった。しかし、1938(昭和13)年4月に公布された「国家総動員法」の第17条により、重要産業統制法では回避されていた企業の強制設立、カルテルへの強制加入、および統制協定に関する政府の決定権が規定されたことにより、その存在意義を失っていった。そうした中、重要産業統制法は施行期間の満了により、1941(昭和16)年8月11日に失効となった。 |
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参考資料 | 「重要産業ノ統制ニ関スル件」(Ref:A03021794900)。「昭和六年法律第四十号重要産業ノ統制ニ関スル法律中ヲ改正ス」(Ref:A14100528400)。三和良一「重要産業統制法」『国史大辞典 第7巻』312~313頁。宮島英昭「1930年代日本の独占組織と政府―重要産業統制法の運用と36年法改正―」『土地制度史学』第28巻第2号、1986年。 |