■御署名原本について
御署名原本とは
「御署名原本」(ごしょめいげんぽん)とは、憲法、詔書(しょうしょ)、法律、条約、勅令(ちょくれい)などを上諭(じょうゆ:天皇の裁可を示す文章)により公布する際の、御名(ぎょめい:天皇の署名)・御璽(ぎょじ:天皇の印)を付した文書の原本です。
明治政府では当初、重要な法令は、布告や達(たっし)として太政大臣の名で公布されていました。しかし、明治18年(1885年)12月の内閣制度導入にともない、法令の制定手続きや公布方法も改められることになりました。
資料1は、明治19年(1886年)2月26日に勅令第一号として公布された公文式(こうぶんしき)です。新たに法令の制定手続きや公布方法を規定したこの公文式では、法律・勅令は天皇の上諭により公布することが定められました(第一条)。また上諭により公布される法律・勅令には、天皇自らの署名と御璽の捺印の後に内閣総理大臣が副署し、各省主任の事務に関するものは、内閣総理大臣及び主任大臣が副署することが定められました(第三条)。これらの規定により御名・御璽と大臣の副署が付された法律・勅令の公布原本が作成されることになりました。これが「御署名原本」です。公文式は、上記の規定にのっとり、明治天皇の御名・御璽と当時の内閣総理大臣伊藤博文の副署が付される形式をとった最初の「御署名原本」でもあります。なお公文式には直接規定がありませんが、公文式制定以降に公布された条約や憲法、詔書なども法律・勅令と同様に御名・御璽と大臣の副署が付された「御署名原本」がのこされています。
資料2は、明治22年(1889年)12月28日に勅令第百三十九号として公布された公文式の改正令です。この改正令では、同年2月11日に発布された大日本帝国憲法と、これに基づいて同年12月24日に公布された内閣官制での総理大臣と国務大臣の権限の規定に合わせ公文式第三条が改正され、法律及び一般の行政にかかわる勅令には御名・御璽が付された後に内閣総理大臣と主任大臣が副署し、各省専任の事務に関する勅令は主任大臣のみが副署することが定められました。
資料3は、明治40年(1907年)1月31日に勅令第六号として公布された公式令(こうしきれい)です。公文式を廃止して公布されたこの公式令では、従来の公文式では直接規定されていなかった詔書や勅書、憲法や皇室典範の改正、国際条約、予算などの公布について、御名・御璽が付された後に内閣総理大臣などが副署する形式が定められました(第一条、第二条、第三条、第四条、第五条、第八条、第九条)。また法律、勅令については、内閣総理大臣が副署することが改めて定められました(第六条、第七条)。
以上の勅令をふまえて作成された御署名原本のうち、アジア歴史資料センターでは、明治19年(1886年)から昭和22年(1947年)までの御署名原本30,190冊を公開しています。これらの御署名原本を直接ご覧になりたい場合には、次の手順で検索を行ってください。
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以上の手順により各時代ごとの御署名原本を一覧することができます。
資料1:
A03020000500 御署名原本・明治十九年・勅令第一号・公文式
資料2:
A03020047300 御署名原本・明治二十二年・勅令第百三十九号・公文式第三条改正
資料3:
A03020702100 御署名原本・明治四十年・勅令第六号・公式令制定公文式廃止
参考文献:中野目徹『近代史料学の射程‐明治太政官文書研究序説』(弘文堂 平成12年)